有期雇用契約は試用期間の代用、本採用拒否を認めず/TBWA HAKUHODO事件(東京高判令7・4・10)

★ 1年間の有期労働契約は試用期間だったとして、期間満了後の雇用を正規雇用として地位が認められた事件
                                         TBWA HAKUHODO事件(東京高判令7・4・10)

1,Y社は広告等を目的とする株式会社である。Xは、正社員採用を希望して、人材紹介会社を通してY社の求人に応募したが、令和4年2月   
 16日、Y社とのオファー面談に臨み、人事局長CからXへの内定が契約社員としてのものであることや労働条件等について説明を受けた。C 
 がXに提示した資料には、「雇用形態 契約社員 ※正社員登用制度あり」等の記載があった。Cは、雇用形態が契約社員となることについ
 て、「長めの試用期間のようなものと考えていただければ。来年には正社員です」等と述べた。

2,同月17日、Y社はXに内定通知書兼労働条件通知書を交付した。同書類には、「雇用形態 契約社員」、「契約期間 入社日より1年間 な
 お、本人の勤務成績、能力、健康状態、または業務上の都合等を勘案して、契約を更新することがある。(正社員登用制度有)」、「処遇 年俸
 給) 450万円」等の条件が記載されていた。同月18日、XはY社に内定を受諾する旨回答した。

  3月1日、XとY社は雇用契約書を作成し、本件労働契約が成立した。本件契約書では、Xの試用期間は入社発令日より起算して3か月間
 とされていた

3,令和5年1月頃、Y社はXに1年間の有期労働契約の更新を申し入れたが、Xは正社員に登用されないのは不当と主張し受け入れなかっ
 た。後日Xは、不本意ではあるが契約社員として更新契約の締結に応じる旨回答した。しかし、Xは、3月1日以降にY社より交付された契
 約期間を「期間の定めありとする雇用契約書には署名や押印をしなかった。

4,Xは、本件労働契約における1年間の雇用期間満了後の令和5年3月1日以降もY社にて就業しつつ、Y社を相手方として、無期労働契約
 上の権利を有する地位にあることの確認等を求める民事調停の申立てをし、Y社は7月10日、Xに対し翌日以降の勤務を控えるよう告知し
 た。同月22日、Xは、試用期間経過後の5年3月1日からは正社員相当の賃金である年俸600万円の請求権を有すると主張し、Y社に対し期
 間の定めのない労働契約上の地位の確認等を求めて本件訴訟を提訴した。

 

5,  本件判決は、以下のとおり、Xの請求を認めた一審判決(東京地判令6・9・26)の判断を一部補充のうえほぼ維持し、Y社の控訴を斥け
 た。
☆ 判決のポイント
 有期雇用という形式が、従来の「労働慣行」と異なったり、面接時等の正社員にする等の「会社の言動」により否認されたこと。

☆ 会社はどうすべきか

 労働関係の裁判では「形式よりも実態」を見られます。労使紛争を防ぐために就業規則や諸規則を整えることは重要ですが、実態と異なることを決めてもほぼ認められません。とくに有期雇用に関してはいったん「有期にしてから正規雇用」という流れは、ほぼ無期雇用(正社員)の権利が与えられた状態とみられます。
 このような場合にはあまりトリッキーにならずに、試用期間をきちんと管理する方向のほうが現実的ではあります。


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