2つの試用期間

 試用期間とはいわゆるお試しの期間で、 企業と労働者でのお見合い期間のように捉えられてることが多いと思います。主に企業側が利用するものですが、将来当社において成果を出せる能力があるのか、等を見極める期間といえます。専門的には「解雇権留保付労働契約」といわれ、企業にとっては解雇しやすい期間といえます。
 ただし現実としては、試用期間満了で解雇はなかなか認められず、通常の解雇とあまり変わらない感じがします。

1,労働基準法の試用期間
 
この場合の試用期間は2週間で、この期間に解雇しても解雇予告手当を支払わなくても良い期間のことです。これは単純に手続き上の話です。これで問題になることはあまりありません。

2,通常の試用期間(民法からの判断)
 
この場合、能力や適性を見極めることが大きな目的で、いわゆるお試し期間です。上記の解雇権留保付労働契約といわれます。特に期間の決まりはありません。ただし下記のような民法の条文もあり、職種などから相応な期間を決めることになります。会社としては長いほうが良いのですが、社員を不安定な立場にすることにもなるので、それなりの期間で設定することになります。現在は精神疾患等の見極める期間が長くなることが多いので、6カ月程度は設けたいとは思います。

 この場合、試用期間が満了して、または試用期間中に解雇できるかどうかは、合理的かつ社会通念上相当性が問われます。


3,解雇に関する法律

 
★ 民法第 90 条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

★ 労働契約法第16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


4,解雇予告について 
  


解雇を行うときには、解雇しようとする従業員に対し、30日前までに解雇の予告をする必要があります。解雇予告は口頭でも有効ですが、口約束では後々にトラブルの原因となりますので、解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましいでしょう。また、従業員から作成を求められた場合は、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければなりません。
 一方、予告を行わずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金を支払う必要があります。(解雇予告手当)

●解雇予告が不要な場合
 「従業員の責に帰すべき理由による解雇の場合」や「天災地変等により事業の継続が不可能となった場合」には、解雇予告や解雇予告手当の支払いをせずに即時に解雇することができます。ただし、解雇を行う前に労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けなければなりません。
 また、次のような場合は解雇予告そのものが適用されません。ただし、下欄の日数を超えて引き続き働くことになった場合は解雇予告制度の対象となります。解雇権の濫用による解雇は無効です
 就業規則や労働契約書に明示されていたとしても「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と法律で定められています。「体調が悪く連絡できないまま無断欠勤をした」といったやむを得ない理由があった場合や、単に「商品を壊した」「服装がだらしない」といった理由だけで解雇することはできません。

解雇のルールを確認しましょう

試用期間中の者 14日間
4カ月以内の季節労働者 その契約期間
契約期間が2カ月以内の者 その契約期間
日雇労働者 1カ月
5,解雇が認められなかった判例

学生運動への関与の秘匿を理由に解雇/労働側勝訴
(1) 大学卒業と同時にYに採用されたXが、3か月の試用期間満了直前に本採用を拒否されことから、労働契約関係の存続を求めて提訴したもの。なお、Yが本採用を拒否したのは、Xが大学在学中に学生運動に関与した事実を身上書に記載せず、面接の際にも秘匿したことが詐欺に該当し、また、管理職要員としての適格性がないとするものであった。
(2) 最高裁は、雇用契約上の権利を認め賃金の支払いを命じた東京高裁の判決を破棄し、差戻した。(3) なお、差戻審で和解が成立し、Xは職場に復帰した。
                                                   三菱樹脂事件 最高裁 S48.12.12
                                                            厚労省 HPより
 社員登用試験の不合格を理由に解雇/企業側敗訴
(1) 中途採用の「見習」社員から登用試験を経て「試用」社員に登用されたが、その後3回の「社員」登用試験に合格しなかったことから、就業規則に基づき解雇されたXが、当該解雇は無効であるとして地位保全等を求めて仮処分を申請したもの。
(2) 名古屋地裁は、現業職員の業務適性は見習社員期間(短い者で6~9か月、長い者で15か月)中に判断できるから、試用社員に登用した者に更に12~15か月の試用期間を設ける合理的な必要性はないとして、当該解雇を無効とするなど申立ての一部を認容した。
                                                 ブラザー工業事件 名古屋地裁 S59.3.23

                                                              厚労省HPより

6,解雇が認められた判例   
   

業務命令に従わない等による試用期間中の解雇
(1)医療材料・機器の製造販売を業とする株式会社Yに、試用期間三カ月として雇用契約を締結し、販売商品の発送業務、商品発表会の開催案内をパソコンのファックスモデムを利用して全国歯科医への送信等を行い、将来的には商品知識習得後、顧客となるべき歯科医等への商品説明業務にも従事することが期待されて入社したXが、試用期間中に、右業務に従事していたところ、歯科医が緊急を要するとして発注してきた依頼に速やかに応じない態度をとり、また採用面接時にパソコン使用に精通していると述べたにもかかわらず、それほど困難でない作業も満足に行うことができないほか、会社業務にとって重要な商品発表会の翌日には参加者にお礼の電話等をするなどの業務が行われ社員は必ず出勤するという慣行になっているにもかかわらず、休暇を取得するなどしたことを理由に、試用期間満了直前に解雇されたことから、右解雇は解雇権濫用にあたるなどと主張して、労働契約上の地位確認及び賃金支払を請求
(2)本件解雇は客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当と是認される場合に該当するとされたが、争いがあった解雇の時期についてはXの主張が採用され、Xの主張する解雇日から三〇日経過し本件解雇の効力が生じるまでの未払賃金について請求が一部認容された事例。
                                              ブレーンベース事件(東京地判平13・12・25)

7,試用期間中と満了の解雇 
   

 試用期間がまだ残っている時期での解雇と、試用期間満了での解雇(本採用拒否)では、違いあるか。いずれにしても試用期間での解雇には通常の解雇と同じくらいなハードルはありますが、期間満了後の解雇(本採用拒否)のほうが会社としては有利に働くようです。


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