Ⅰ 降給(賃下げ)について
降給とは文字通り給与が下がることですが、懲戒つまり悪いことを行ったことによる懲罰的なもの、経営悪化で給与の維持ができなくなってしまったもの、人事制度での評価が悪かったりそれに伴って降格(管理職から一般職等)したり、などの要因があります。給与を下げることは本人にとってショッキングなことであり、状況によっては社員の生活を脅かすことにもなります。また場合によっては労使紛争に発展することもあるので、十分に注意する必要があります。 一方、右肩上がりの成長が望めなくなってる現状では、右肩上がりの昇給を維持することは難しいでしょう。また、定年年齢が延長していくにあたっては、給与体系の見直しも必須にはなります。
ここでは降格や能力不足による降給について記載します。
1,降給の法的な制限について
原則禁止の条文
ここでは降格や能力不足による降給について記載します。
1,降給の法的な制限について
原則禁止の条文
合法な不利益変更についての条文労働契約法
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
労働契約法
第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
2,経営としての降給制度
いわゆる年功給に代表されるように従来給与は上がるものでした。これは人は経験や年齢が積み重なるにしたがって能力があがり成果を出すことができることが前提の制度で、近年のように定年年齢が上がったり、技術革新など経営環境が激変していくなかで、ましてやAIが急拡大するなかで、経験で成果を出すことは難しく、年功によって給与が上がる制度は破綻しています。法律に抵触せずモチベーションを下げずに柔軟な給与制度を設けることは経営にとっては必須です。
Ⅱ 降格・評価による降給
1,就業規則への記載は必須
いわゆる年功給に代表されるように従来給与は上がるものでした。これは人は経験や年齢が積み重なるにしたがって能力があがり成果を出すことができることが前提の制度で、近年のように定年年齢が上がったり、技術革新など経営環境が激変していくなかで、ましてやAIが急拡大するなかで、経験で成果を出すことは難しく、年功によって給与が上がる制度は破綻しています。法律に抵触せずモチベーションを下げずに柔軟な給与制度を設けることは経営にとっては必須です。
Ⅱ 降格・評価による降給
1,就業規則への記載は必須
昇給に関する事項は就業規則の絶対的記載事項です。これは昇給に関することを記載しなければいけないということで、昇給が義務付けられているわけではありません。しかし昇給を行わないと明言することは著しくモチベーションを下げますし、最低賃金があるので昇給を行わない規程は実質上はないでしょう。通常は昇給の時期を記載します。
これと同時に降給のことも書くことが良いでしょう。まさか降給の時期を書くこともないですが、降給することもあるとの記載で十分でしょう。
2,人事制度の構築
降給したときは不利益変更や経営者の恣意的な行為を問われることが多いので、人事制度に基づいて行ったとする仕組みは大事です。これは法的にクリアするといったことにも増してモチベーション低下を防ぐことが目的となります。
人事制度というと特に中小企業にとってはハードルが高くなりますが、シンプルなもので十分です。どんなに簡単なものでもなにもないことに比べたら、経営管理面から大きな進展となります。
人事制度に関してはこちらを参照にしてください。
3,超簡単な賃金表
人事制度には賃金表が必須ですが、作りづらかったり、作っても運用ができなかったりします。それは精緻なものを作ろうとしてできなかったりすることが多いのですが、下記のように役割や業務の難易度だけでシンプルに作ると運用しやすくなります。また、役割が落ちたことによる降給などは法的には問題はないでしょう。
役割等級 給与バンド
| 役割等級 | 給与バンド | |||
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リーダー (リーダーシップ) |
40万円~ | |||
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マネジャー (マネジメント) |
30万円~42万円 | |||
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ミドル (一人前) |
25万円~32万円 | |||
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ジュニア (命令に従う) |
~27万円 |
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Ⅲ 降給に関する裁判例
1,降給が否定された例
みちのく銀行事件(最高裁平成12年9月7日第一小法廷判決)2,降給が認められた例
【事件の概要】Xら6名(少数組合の組合員でいずれも当時55歳以上の管理職・監督職階にあった)は、60歳定年制を採用していた東北地方の中位行Yの銀行員であった。Yは賃金制度の2度わたる見直しを行う際に、労組(従業員の73%が加入)の同意は得たが、少数組合の同意を得ないまま実施した。この変更に基づいて、専任職発令がXらに出され、Xらは管理職の肩書きを失うとともに賃金が減額した。Xらは、本件就業規則の変更は、同意をしていないXらには効力が及ばないとして、専任職への辞令及び専任職としての給与辞令の各発令の無効確認、従前の賃金支払を受ける労働契約上の地位にあることの確認並びに差額賃金の支払を請求する訴えを起こした。
【判決の要旨】
就業規則の変更により、55歳以上の行員の賃金削減を行ったことについて、多数労働組合の同意を得ていたが、高年層の行員に対しては、専ら大きな不利益のみを与えるものであり、救済ないし緩和措置の効果が不十分であったため、合理性が認められなかった。
就業規則の変更により一方的に不利益を受ける労働者については、不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであり、それがないままに労働者に大きな不利益のみを受忍させることには、相当性がないとした。
都市開発エキスパート事件(横浜地裁2007年9月27日)
【事件の概要】
親会社から土木・建築の設計・施工等を請け負う会社に転籍し、転籍後2度にわたって賃金を引き下げられた従業員が、引下げ前賃金との差額の支払を求めた事案である。 賃下げを是認する労働協約が従業員(非組合員)にも適用されるかどうかについて
【判決の要旨】
横浜地裁は、労組法17条にいう「一の工場事業場」の範囲は、場所的な要素のみならず、勤務実態、契約関係、権利義務関係、労働協約の趣旨等を総合的に勘案し、同条の趣旨に鑑みて決するほかないとして、従業員を除く転籍従業員加盟の労働組合との間で締結された労働協約が前記賃下げ後の賃金を容認したものであり、同条の要件を満たすとした。次に、当該協約の未組織労働者への適用については、当該労働者が組合員資格を認められているかどうかなどに照らし、特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理だと認められる特段の事情があれば協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできないとしつつ、本件では著しく不合理であると認められる特段の事情もないから賃金額は賃下げ後の額となり、したがって未払賃金は存在しないとした。
コンセプトは ”人が動き、会社が儲かる” しくみづくり
「助成金」と「就業規則」の社会保険労務士法人
横浜市中区相生町6-104 リアライズ社労士法人