退職金規程、廃止できる? 

1,現在までの権利と将来の権利は解釈が異なる
 
 退職金を出すか出さないかは会社の自由です。一方、退職金を出す場合には、退職金規程を作成する必要があり、記載事項は下記のとおりです。
 退職金規程を廃止する場合、退職金そのものを辞めることになるので、話は簡単ではありません。退職金は労働者にとっても会社にとってもその意味合いは大きいので、慎重にならざるを得ません。一方、雇用の多様化等労働環境も大きく変わってきているので、抜本的に思考する機会を設けることも重要なことだと思います。
 退職金は現在までのものは既得権、今後のことは期待権として、権利の大きさ等で違いがあります。もし現在退職金制度を辞める場合、現状での退職金の権利は守らなくてはいけませんが、将来のもの(あと何年勤めたらいくら)は、守られないケースはあります。退職金を今後どうするかによって、退職金規程の改訂の仕方は変わっています。
 
2,退職金規程の記載事項 
 
適用される労働者の範囲、
退職手当の決定、
計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
※ 労基法89条の3の2
 
退職金規程の変更を認めなかった判例

御国ハイヤー事件 最高裁 昭和58.7.15

退職金規定を廃止し、それまでの就労期間分の退職金は支払うがそれ以降は支払わない旨の就業規則改訂について、不利益変更の代償となる労働条件が提供されていないことを理由に無効とした。

<以下概要>原審は、本件退職金支給規定は就業規則としての性格を有しており、右の変更は従業員に対し同年8月1日以降の就労期間が退職金算定の基礎となる勤続年数に算入されなくなるという不利益を一方的に課するものであるにもかかわらず、上告人はその代償となる労働条件を何ら提供しておらず、また、右不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、右の変更は合理的なものということができないから、被上告人に対し効力を生じない、と判断した。以上の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

退職金規程の変更を認めた判例
朝日火災海上保険(石堂・本訴)事件 1997年3月27日 最高一小
「(1) 損害保険事業者Yは、A社鉄道保険部の保険業務を従業員ごと引き継いだ昭和40年以降、Xを含む元A社従業員とY固有の従業員の労働条件を統一するため労働組合との間で交渉を続けた結果、昭和47年までに、定年の取扱い(元A社従業員は63歳、それ以外の者は55歳)を除きほぼ統一した。しかしYは、昭和52年に多額の赤字を計上し経営再建を余儀なくされたことから、その一環として定年年齢を統一し退職金算定方法を一元化すべく組合と交渉した結果、昭和58年に定年を満57歳とすることで合意し労働協約を締結した。このため、昭和61年8月に満57歳となったXは、当該協約は労働条件を不利益に変更するもので無効であるとして、従前の定年63歳までの労働契約上の地位確認と従前の算定方法による退職金の支払いを求めて提訴した事案。
(2) 神戸地裁・大阪高裁ともに、極めて不合理であると認める特段の事情がない限り、労働協約の不利益変更の効力は不利益を受ける個々の組合員にも及ぶとしてXの請求を棄却し、最高裁も、Xが受ける不利益は決して小さいものではないが、当該協約に至った経緯、当時のYの経営状態、当該協約の内容全体としての合理性などに照らせば、一部の組合員を特に不利益に扱うなど組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、規範的効力を否定する理由はないとして棄却した。」
「」全国労働基準関係団体連合会HPより引用