休職を繰り返す社員、どう対応する?(精神疾患等)

1,急増する精神疾患(20人に1人が罹患)

 

 当事務所のクライアントからの相談で、社員が精神疾患にかかったことによるものがたいへん増えています。厚生労働省の調査によると2025年現在、精神疾患を有する患者数は600万人を超えているそうです。20人に1人が精神疾患の治療をうけていることになります。また東京労働局の調査では過去3年程度の間に精神障害の発症例があり今後も発症の懸念があるとする企業は、72.4%となっているそうです。
 ここでば人事面からの対応方法を記載します。
 
2,休職規程の見直し

 

 健康状態の把握が難しい精神疾患による休職を前提としていない休職規程が、まだまだ多く存在するようです。下記に留意して作成することが重要です。
 
(1)休職期間の見直し
 中小企業にもかかわらず、休職期間が1年~2年となっている規程をみかけますが、自社の経営体力等から判断して見直すべきです。中小企業が大企業並みの条件で設定すると、代替要員の確保や配置等で弊害がでます。精神疾患の場合治癒が長引くことが多くありますが、どこかできっちりけじめをつける必要はあります。
 
(2)通算規程の設定
 精神疾患の場合、症状の悪化や回復を繰り返すことが多くあります。同じ疾患等で再休職した場合、前後の期間を通算する通算規程は絶対条件です。これがないと正常な業務が難しいにもかかわらず、何年も在籍してしまうことにもなります。
 
(3)復職のルール設定
 前職と同等の職務に就けることを原則とすることが望ましいと思われます。ただし100%回復というケースはまずないので、リハビリ期間の設定や正常業務までの教育プログラム等の仕組みも必要となります。またその場合、就労時間の短縮もあるので賃金額の再設定等も必要となります。
トラブルの原因にもなりますが、安全配慮義務からも必要な措置です。
 
(4)期間満了における留意点
 完治しなければ期間満了、つまり退職(解雇等)となりますが、ここは労使紛争になるケースも良くあります。客観的な資料を集め、十分な話し合いのもとで決定すべきです。傷病手当金をもらって、充分に休み、完治したら再就職、といった前向きな提案も考えてみてください。
 
3,復職時の注意事項

 

復職の判断
 休職中の社員から復職の希望があった時、会社としてはたいへん難しい判断となります。主治医や産業医の判断はあくまでも参考なので、それらを含めて会社が最終判断をしなければなりません。厚労省では下記のことをリーフレットに書いています。
 
① 病気休業開始および休業中のケア
② 主治医による職場復帰可能の判断
③ 職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
④ 最終的な職場復帰の決定
<職場復帰>
⑤ 職場復帰後のフォローアップ
 
4,復帰プログラム

 

 中小企業としては、人事制度的に職場復帰の要件は「従前の業務に就けること」にすべきだと思いますが、復帰していきなり従前の業務につけることはNGです。最初は短時間から、簡単な業務から行うべきで、それらを職場復帰プランとして計画する必要があります。重要なことは本人・主治医・職場の上司・人事担当等と連携し、スムーズに職場復帰できることに取り組むことでしょう。   
 また、この時には業務時間も業務内容も少なく簡易になっているので、期間限定で賃金を見直しても良いと思います。トラブルになることもありますが、無理なく職場復帰につながるためには、必要なことでしょう。これらを規程に盛り込んでおくことは必須です。

☆ 休職中の解雇が無効とされた判例
東京地裁 平成17年2月18日判決(カンドー事件、労判892号80頁)

<概要>
復職後に再度不調となった社員を解雇した事案

<結論>
 裁判所は、
1,就業規則では最大2年の休職期間を与えることが可能であるところ、原告に与えられたのは7か月余りに過ぎないこと、
2,使用者側において専門家の意見を求めた形跡がないこと、
3,医師の意見によれば適正な治療を受けさせることによって回復する可能性がなかったとはいえないこと、
4,自律神経失調症を患っている他の労働者は雇用を継続しており平等取扱に反すること
 などから、解雇を無効とした。
☆ 休職期間満了の解雇が有効とされた判例
東京地裁平成16年3月26日判決(独立行政法人N事件、労判876号56頁)

<概要>
 精神疾患による休職を命じられた労働者が通常勤務が可能な状態に回復したと主張したが、使用者が休職期間満了により労働者を解雇したため、解雇の有効性が争われた事件である。

<結論>
 医師の見解によれば、原告が復職当初担当できる業務量は従前の半分程度であり、その期間として半年を要するとされているが、半年という期間はいかにも長く、半年後に十分に職務を行える保障がないこと、休職期間2年6か月と長期間に及んでいることなどを考慮して、解雇は有効であるとした。

 

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