<事案>
業務用機械の卸売り業Y社(従業員50名)は、入社以来1年間、1台も売らない営業マンUを成績不良を理由に解雇したところ、労働審判で解雇無効を訴えられた。
<ポイント>
成績不良を理由にした解雇は難しいです。程度・証拠・教育はしたか、等高いハードルがあり、また他の職種への転向はできないか、といったことも問われます。ただし企業としても成績が著しく悪い社員を雇っておくほど余裕がないことも事実です。
① 就業規則の解雇事由に、具体的にどの職種でどんな成績の場合等、を書いておく
② 試用期間を長めに取り、その間に能力を見極める
③ 評価制度を作っておく(成績が悪い場合、処遇が落ちる)
等がポイントになります。企業防衛という意味だけではなく、お互いにわかりやすくしておくことは良いことだと思います。
営業職が売ることが出来なかったら、会社としてはコストだけになってしまいます。まさに給料ドロボウになってしまうので、解雇やむなしの発想になりがちですが、売れないというだけで解雇することはほぼ不可能です。ただし手をこまねいているわけにもいきません。
教育や配置転換で能力を発揮できるようすべきでしょうが、人によっては限界があることも事実です。雇用を維持することが無理であれば、会社と本人のお互いのためにも退職勧奨をすべきです。たまにマスコミで紹介されるような○○部屋に閉じ込める、みたいな陰湿なアプローチよりははるかにましでしょう。ただしこの場合パワハラや退職の強要にならないよう、方法や回数、ことば遣い等を充分注意してください。
それから下記に書きましたが、売上があがらなければ給与があがらない仕組みは必須でしょう。
営業職には売上に応じた給与設計は必須です。ただし、ルート営業的な既存客のメンテナンスを含む場合や、グループで業務を行う場合には、コミュニケーション力や企画力等の売上とは別の要素の評価が必要ですしょう。一方、個人で主に新規開拓で成果を上げるタイプの営業では極端なはなし最低保証を設けたうえで完全歩合給に近い形での給与設計が効果的でしょう。
当事務所のクライアントでも、コンサルティング案件を個人営業で開拓する業務を固定給で設定して、成果が上がらなかったケースや、逆に不動産の賃貸の紹介業務に大きな歩合給制度をいれて、組織運営がガタガタになってしまった事例を見ています。
前者は業務が新規開拓しかないので、固定給が出たら働かなくなってしまいますし、後者は窓口にきたりWEBで問い合わせが来た人に、複数の人がかかわって成約にもっていくべきところを、成果にならないことはやらない等のギクシャクした対応がディメリットになってしまった事例です。
営業職とはいえさまざまな業態はあるので、給与設計も一概には行えませんが、売上に応じた待遇は必須です。
期間の定めのない雇用契約により6ヵ月間の試用期間で営業職の課長に雇用された社員が、使用期間満了前に営業職の資質に欠けるとして解雇されたため、解雇が無効であると地位確認を求めた裁判。第二審東京高裁は、試用期間が経過した時における解約留保条項に基づく解約権の行使が、客観的・合理的な理由が存し、社会通念上相当と是認され得る場合に制限されることに照らせば、6か月の試用期間の経過を待たずして会社が行った解雇にはより一層高度の合理性と相当性が求められるとした。その上で、課長が訴訟を提起することや、会社の違法行為を内部告発することを理由に課長を不利に扱うことが許容されると解することはできないとして、原審を維持し、本件控訴及び附帯控訴を棄却した。
ニュース証券事件 東京高裁 2009年9月15日