<事案>
S社はソフトウエア会社。数年の創業時、大手企業をリタイアしたOを臨時のつもりで経理担当として雇入れた。その後順調に業績を伸ばし、経理・総務担当を担当すべき従業員の採用もできたので、66歳になったOに定年齢の経過による退職を打診したところ、Oはそんな約束はないと拒否、さんざんもめたがあげく、退職金支払い等の条件付きで辞めてもらった。
<ポイント>
S社に就業規則がなく、Oと雇用契約をしなかったこと、定年は就業規則で定める、雇用契約に定める、等を行って初めて効果がでます。もし定年を定めていない場合、何歳になっても解雇による退職になってしまい、会社としては解雇権の濫用により解雇できない、等の問題が発生します。この事例はむしろ和解できてよかったともいえます。
また定年があっても、それを超えて勤務している従業員がいる、定めてある定年年齢が法律を下回る、等の場合はやはり定年がないのと同じ解釈になってしまうケースもあるので要注意です。
<現在>
定年60歳以上、65歳まで雇用確保措置
1,継続雇用
2,再雇用
3,定年の廃止
<2021年>
70歳までの定年延長の努力義務
<2025年>
定年65歳
途中で70歳までの努力義務がはいるので紛らわしいのですが、つまりは2025年には定年は65歳以上となります。
ここで問題となるのは高齢者の処遇です。現在は定年が60歳なので、60歳でいったん従前の条件は終わりにして再雇用ということでの仕切り直しができましたが(同一労働同一賃金で争われた事例もありますが)、今後はそれは難しくなりそうです。しかしこの年齢は能力ややる気に大きく差が出たり、ライフスタイルの指向が大きく変わるので、従前の職務内容や条件の延長では無理がでるでしょう。
やる気と能力のある人は大きな責任と高い給与で大いに活躍してもらい、一方この辺で一段落してもらいのんびり働いてもらう、後進の指導に特化してもらう、等の多様な人事制度が重要となるでしょう。